和紙

日本画は紙や絹などの素材を活かして、制作されます。自分の表現を追い求める人たちのお役に立ちたいと、和紙を集めてお分けしています。

これまで使ったことのない和紙を試していただくのは、作家の方にとっては大変なことですが、私達にはどの様な作品が生まれるか楽しみです。それぞれの表現に合う和紙があると思われるので、今はそれを知ることも楽しみです。できれば、一人一人の表現に合う和紙を作れればと思っています。

手漉き紙を体験し知っていただくためにさまざまな企画を行ってきました。その記録も合わせてご覧下さい。

手漉き和紙は店頭にてご購入いただけます。

 

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和紙について

強く薄く、しなやかで美しい。
手漉き和紙は、澄んだ水のある土地で、主に楮 (こうぞ)・三椏 (みつまた)・雁皮(がんぴ)という植物の繊維から一枚一枚作られます。

和紙と洋紙の違い

これらの違いについて、現在はっきりと定義がなされているわけではありません。日本に洋紙技術が入ってきたのは明治初期、この頃日本で生産されていた紙は、楮(こうぞ)・三椏 (みつまた)・雁皮(がんぴ)などの原料を、一枚一枚手で漉き上げた紙のことでした。そこに欧米から機械で紙をすく技術が伝わり、それまでの伝統的な紙と区別するため、機械生産で木材パルプ等を原料とした紙のことを「洋紙」、これまでの伝統的な原料や技法で漉かれた紙のことを「和紙」と呼びました。
現在では機械ですかれる楮紙もあり、パルプの混入といった合理化も進んでいるため、「和紙」の定義が難しくなってきています。

*数寄和では材料も技法も伝統的な方法で作られる、本来の”手漉き和紙”のみ扱っています。

手漉き和紙と機械すき

今私たちの生活の中で使われている紙(新聞紙・書簡・ノート等)は、ほとんど機械ですいた紙です。 機械ですくことの利点は、大量生産が可能でしかも品質が一定で出来上がるということです。 プリンタで印刷される紙などは、均一に刷り上がる必要があるので機械すきは大変適しているといえます。 現在では、機械ですくことのできないとされていた楮の繊維も機械ですくことが可能になり、機械すきでも手漉きの和紙に大変よく似た紙が作られるようにはなりました。 しかし、やはり和紙本来の強さや和紙それぞれの持ち味、風合いなどは、一枚一枚職人さんの手によって漉き上げられるからこそなのだと思います。 職人さんの手で漉かれた紙は、一枚一枚にその紙の表情がでてきます。

 

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手漉き和紙(楮紙)のできるまで

1. 楮の収穫

原料となる楮を冬に収穫します。楮は一年かけて栽培し、毎年収穫できます。

2. 釜で蒸す

収穫した楮は一定の長さに揃え、楮に蒸しおけをかぶせて蒸気で蒸します。皮が剥がしやすくなります。

3. 皮剥き

和紙は白皮の部分から作られるため、外側の黒皮や緑色の甘皮は丁寧に包丁で削り取ります。

4. さらす

以前は楮の皮を川の浅瀬に並べて、原料に含まれる不純物を流し出していました。現在では大きなコンクリート水槽の中で行われています。その時同時に、日光にさらすことよって自然に白くなります。

5. 煮熟(しゃじゅく)

大きな釜で煮て白皮をやわらかくします。

6. 塵取り

以前は清流に浮かべた竹ざるのなかで、原料に残っている塵やキズをひとつずつ手作業で取り除いていました。現在ではコンクリート水槽の流水の中で行われます。

7. 叩解(こうかい)

楮を石盤にのせて、木づちで叩き繊維を細かくします。
現在ではビーターを使った機械叩解が多くなっています。

― 以上の工程を経て、ようやく ―

8. 漉く

「流し漉き」という技法で、漉船の中に下処理をした繊維と水と ” ねり “(トロロアオイの根などから採れ、繊維の沈殿を防ぎ結束を無くして、均一に分散させるための粘りのある成分)を加え、簀桁という道具を使って紙料をすくい、縦横にゆすりながら繊維をからませます。目的の厚さになるまで何度か汲み込みます。

9. 圧搾

漉き上がった湿紙 は、重ねて一晩置き、上から圧力をかけ脱水します。

10. 乾燥

圧搾した紙を一枚一枚を丁寧に剥がしながら、干し板に貼り付けていきます。屋外に出して天日で乾燥させます。

11. 選別

乾燥した紙を一枚一枚光に透かし、厚さや色合い地合いによって分類します。

 

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和紙の特性

現存する最古の和紙は、奈良の正倉院(奈良・平安時代に重要物品を納める正倉、それらが幾棟も集まる一郭が正倉院と呼ばれたが、現在残っているのは僅か正倉一棟でそれを『正倉院宝庫』という)に所蔵されている美濃、筑前、豊前の和紙で、戸籍に使用され大宝二年(702年)の日付が残っている。

強くて長持ち

その原因は、植物の繊維にあります。 化学繊維やレーヨン、或いは動物の毛をすくって乾燥させても、ばらばらにちらばり一枚にはなりませんが、植物の繊維には’自己接着性’があるため、すくい上げそのまま天日で乾燥させると丈夫なシートが出来上がります。 自己接着性とは繊維と繊維が重なった接点で互いにくっつきあう性質です。
植物繊維はセルロース分子がたくさん集まってできており、そのセルロース分子のところどころに水の分子と同じ型をした部分があります。 その型の部分が水とよくなじみ、繊維を水に浸すと非常に水を吸い膨張します。 植物繊維に十分水を吸わせて漉き上げて乾燥させると、それまで水と結合していた繊維と繊維の接触している部分が、次に繊維同士の結合(水酸基結合)に変り、紙全体で丈夫なシートになっていくのです。

繊維の長さ

和紙の強さは、繊維の特徴によっても説明できます。 洋紙の原料であるパルプが、針葉樹のパルプで平均 2.3 mm、広葉樹のパルプで 1.02 mmに比べて、手漉き和紙に使われる楮(こうぞ)は 7.3 mm、三椏(みつまた)は3.2 mm、雁皮(がんぴ) 5.0 mmとかなり長いことがわかります。 ちなみに繊維の長さに対しての幅の比率を比べてみると(長さ/幅)、針葉樹のパルプで 86、広葉樹のパルプで 60に比べて、楮 510、三椏 420、雁皮 490と、非常に長くて細い繊維であることがわかります。 とくに、繊維の長さは長ければその分繊維と繊維が結合する箇所も多くなるので、それだけ強い紙になるといえます。

薄くても丈夫

和紙に特有の紙製法の技術として、トロロアオイ等の根から抽出した「ねり」という粘りのある成分の使用が上げられます。 和紙を漉く際に混ぜることで、繊維が均一に拡散し、繊維そのものの強さや特徴を生かした、薄くて丈夫な紙を漉くことができます。