表具

「表具は衣装である…」

表具を「衣装」に例えることは、その役割を説明する時に頻繁に使われる表現です。 それは表具が、書画の持ち味を引き出す装飾としての役割を持つとともに、破損や常に変化する外気から身を守る、保護としての役割も兼ね備えているということを意味します。 特に日本の絵画は、和紙や絵絹という繊細な素材の上に描かれることが主ですので、保存や鑑賞のために安定した形にしておく必要があります。

 

数寄和の表具

古い掛軸の修理をしていると、先人の仕事に感心させられることがあります。 繊細克つ強靭な和紙や絵絹、その周りの裂地(金襴・緞子・無地)、裏打ち、軸先、紐、桐箱、それぞれの仕事に職人の美しい感性とエネルギーを感じます。床の間のない住宅が増え日本画も額装することが多い今、そのような掛軸を作ること自体が難しいところまできているように思います。

数寄和は材料にもこだわった仕事をすることで、これまで受け継がれてきた日本人の美しい技術や感性を、次世代に少しでも伝えていきたいと考えています。また、伝統的なものを残すためには新しい工夫も必要だと考えています。作品を制作する方が表現しようとしている、その人独自の「今」を数寄和は大切にしたいと思います。

慌ただしい現代の生活の中でこそ伝統の魅力を感じて頂けるよう、現代的な空間にも美しく映える表具をご提案していきたいと考えています。

 

「うめのおか」
斉藤典彦

KY014_萩

「扇面 萩」
斉藤佳代

GA005_うつくしい忍耐

「うつくしい忍耐をたのしむ」
亀井武彦

「うめのおか」
斉藤典彦

 

KY014_萩

「扇面 萩」
斉藤佳代

 

GA005_うつくしい忍耐

「うつくしい忍耐をたのしむ」
亀井武彦

 

掛軸の扱い・保管について

作品を保護する掛軸も、扱いによっては中の作品を傷めてしまうことになります。
また、扱い方がわからないという理由で掛軸を敬遠される方も多いのではないでしょうか。
少しの工夫とコツが分かれば、掛軸はどなたでも簡単に扱うことができます。
大切な掛軸を長く楽しんで頂くために、ぜひご一読ください。

湿気が苦手

日本は多湿の気候ですが、掛軸が最も嫌うものの一つがその湿気です。桐箱に入れ、風通しの良い場所に保管してください。
マンション等の鉄筋コンクリート造の建物で保存する場合は、押し入れは湿気がとても来やすいので、タンスの上など少しでも湿気の来ない場所を選ぶようにしましょう。

虫干しが大切

保管場所に気を遣いつつも、箱の中に湿気がこもらないように時々取り出して外気に触れさせることが重要です。
最低でも、年に1~2回・春や秋の晴れた日等、湿度の低い日を選んで虫干しをして湿気を取り除きましょう。

乾燥も苦手

湿気とは逆に、乾燥しすぎることもよくありません。クーラーや暖房の風が直接当たることや、乾燥した部屋に長時間掛ける事は避けて下さい。
また、急激な温度・湿度の変化にも弱いため、直射日光のあたる場所には掛けないようにしましょう。

掛けっぱなしは厳禁

半年以上などの長い期間掛けっぱなしにしておくと、シミや汚れ、或いは日焼けや「反り」等の原因になります。少なくとも季節毎にしまって休ませてあげることが必要です。

めくらない

掛けた状態の掛軸を横からめくるなどすると、折れの原因となるのでやめましょう。

締め付けないこと

掛軸を取り扱う時は清潔な手で、そっとやさしく持ちましょう。強くつかまないようにして下さい。
巻く際はきつく巻かずに緩めに巻きましょう。掛け紐や風帯の下には当て紙をしておくと良いです。

これらのことを守れば、掛軸はとても扱いやすく、収納に適した合理的な保存方法です。
掛軸のある暮らしを楽しみながら季節に合わせて掛け替えをすれば、自然に状態を保つことができるでしょう。