武部翔子個展「影をうつす」9/19(土)~27(日)

12 : 00 – 19 : 00 無休

昨年の公募展「ギャラリーへ行こう2019」において数寄和賞を受賞した武部翔子さんの新作展を開催いたします。

ギャラリーではアルコール消毒液をご用意しています。お越しになる際はマスクを着用ください。体調が悪い場合はお控えください。

ご来場いただけない方のためにホームページで作品画像をご紹介します。また、個展開催に向けたインタビューを掲載しましたのでご覧ください。

作品購入を希望の方は電話やメールにて気軽にお問い合わせください。


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作品制作に関するインタビュー

S(数寄和):これまで武部さんはどのようなテーマで制作を行ってきたのでしょうか?

T(武部):2016年に京都のギャラリー恵風で初めての個展「記憶の庭」を開催しました。その際、故郷である北海道の風景をテーマとし、実家の裏の木々が生い茂る場所で冬にデッサンしたものをメインに発表しました。その頃は厳しい寒さの中に身を置き描いた木々の力強さをペンナイフで削るように表現したり、雪解けのザクザクした硬い雪の表現をしてみたり、力強い表現をしようと試みていました。

S:故郷の風景をテーマにしたのは何か理由があったのでしょうか?

T:19歳で京都に出てきて、はじめて郷愁というものを感じ、社会人になり自立して働くようになってからよりその思いが強くなりました。自分にとって耐え難い蒸し暑い京都の夏には、カラッと涼しい故郷の夏を思い出し、雪の降らない冬にはしんしんと降り積もる雪景色が恋しくなりました。そんな想いを作品にしようと決めました。そして、その想いはだんだん、幼少期から自然の中で遊んだ記憶を蘇らせ、記憶の中の木々の印象が前面に出るようになりました。自分が森林の中でポツンと立っているような印象、夕暮れ時の暗い森に飲み込まれそうな印象だったり、そういった印象が配色などに現れていた気がします。

「冬めく」F150号、2018 ※本作品は展示しません。

S:確かに武部さんの作品を見ると風景をそのまま描くのではなく、形や色をコントロールしながら記憶や心象を内在させた独特の世界観を生み出しているように感じます。

T:デッサンは普通に描くのですが、作品にする際に思い出や印象に寄せて、形を抽象化させています。モチーフの形と空間を色面で埋めるような取り組みを大学の頃から継続しています。100号以上の作品を描く際には、遠景を描くこともありました。遠景の方がより自分の好きな景色への想いを表現できるとも思っています。

「望郷」F150、2017 ※本作品は展示しません。

S:昨年の「ギャラリーへ行こう2019」では小品を3点出品いただきました。風景を断片的に切り抜く視点も面白かったです。

T:それまでの発表の機会が50号や100号以上の大きめの作品が多く、自宅で描ききることの難しさに悩んでいた時期に出品を決めました。小作品なのでいままでの大きい作業ができないため、風景からよりモチーフに目線を近づけてみようと思いました。散歩の途中に軽いスケッチを何枚も描き、そこから心地よい形を選んで絵にしようとして描いたのが「枝のダンス」でした。

「枝のダンス」179×179mm、2019 ※本作品は展示しません。

今までのモチーフも変える必要はなかったので「スキー場のある風景」を描きましたが、こちらでも肩の力を抜いて、心地よいと思う線を引いたり色をのせてみました。

「スキー場のある風景」243×334mm、2019

厳しい自然の中に身を置く機会が減ったことや、京都から東京に引っ越してきて「日常」を送ることに目が向いたことも、描く際の気持ちの変化につながった気がします。

S:「ギャラリーへ行こう2019」で数寄和賞を受賞した後、再びギャラリー恵風にて四人展 Christmas Selection 2019「Advent Calender」に参加されました。出品された作品を見ると、これまでとはまた違った取り組みに見えます。

T:クリスマスをテーマにしたグループ展で、作品の大きさも0号から10号と大きくなく、10点ほど用意することになりました。テーマが自分の好きな冬だったのと、世の楽しいイベントのイメージもあるので、自分自身も楽しんで描こうと思いました。窓から外の景色を見たときに窓の表面に氷の線が入っていたり、雪がこんもり降り積もって木の枝先だけが雪から顔を出している場面など、寒い地方では冬になるとこんなシーンがあるんだけど知ってる?と見る人に問いかける気持ちで描きました。自分にとって身近なモチーフやシーンの描きやすさに気付きました。

寒さ厳しい外で景色を描くのと温かい家の中から外を見るのとでは、対象は同じでも描く際の感覚が異なり、落ち着いた気落ちで描くことができます。
窓ガラスが曇ったり、凍ったりしてできるテクスチャーを風景作品でもフィルターをかけたような効果として取り入れてみました。そのフィルターがあることで風景の中にいる自分から、風景を見ている自分として客観的に表現したいと思いました。

S:実験的で興味深い取り組みですね。今回の個展に向けて、最近の制作についてお聞かせください。

T:今は「ギャラリーへ行こう2019」で試みた「よりモチーフに目線を近づけてみる」ことを継続しています。

「朝霧のたなび」410×319mm、2020

知床を旅した時の霧のなかのハイマツの風景がとても印象的で、高いところにある針葉樹を見上げて描いてきたところから、地面を這う松(ハイマツ:山岳地に多く見られる)を描くことで今までと違った目線で対象を見ることができるのではと思いました。

「reflect」334×334mm、2020

「ギャラリーへ行こう2020」にはこの作品を出品しました。自粛中に公園を散歩をする機会が増え、そこで水面に写る木が波紋でゆがんだり、木自体が風に揺れて動いて見えたりするシーンを観察していました。木そのものの形は変わらないが、水や風によって変形していくのを見て、形の印象を描きたいと思いました。

S:「形の印象」を描くとはどういうことなのでしょうか?

T:描きたいと思う対象に出会った時、写真のように全てが鮮明にインプットできるわけではありません。この景色のこの部分(揺れ動く枝先、枝がリズミカルに交差している部分など)が自分にとって印象に残り覚えている部分です。全てを描写しようとするとその視点がぶれる気がしたので、難しく考えずにその部分を記憶に残った印象として描いてみよう。という感じです。

S:そういった制作の背景を伺うと絵が動いているように見えてきました。最後に個展に向けて一言お願いします。

T:風や水の流れによって移ろうもの、瞬間的にフォルムを変えるもの、それらの影をうつすように捉えることで印象をカタチとして残したいと思います。

S:ありがとうございました。展示を楽しみにしています。


武部 翔子  TAKABE Shoko

略歴
1987 北海道生まれ
2011 京都市立芸術大学 美術学部日本画専攻 卒業
2013 京都市立芸術大学修士課程 美術研究科絵画専攻日本画 修了

展覧会
2011 京都市立芸術大学作品展 卒業制作「山口賞」
   春季創画展入選(同 ’12 ’17 )
  「碧い石見の芸術祭2011」美術大学日本画展「奨励賞」/石正美術館(島根)
   京の若手日本画三人展/西宮阪急百貨店(神戸)
2012 臥龍桜日本画大賞展入選「碧い石見の芸術祭2012」美術大学日本画展/石正美術館(島根)
  京都アート&アンティーク2012/みやこめっせ(京都)
  第39回創画展入選(同 ’18 )
  日本画の色 material, matter, mind 天然絵具と京都オパールの可能性/ギャラリー恵風(京都)、数寄和(東京)
2016 第1回 石本正 日本画大賞展/石正美術館(島根)
  「個展 記憶の庭」/ギャラリー恵風(京都)
2018「筍々会展’17」/京都府立文化芸術会館(京都)
2019「筍々会展’18」/京都府立文化芸術会館(京都)
   「ギャラリーへ行こう2019」/数寄和(東京)
   四人展 Christmas Selection 2019「Advent Calender」/ギャラリー恵風(京都)