瀬田の唐橋
今年の冬は大変雪の降る日が多く、唐橋を渡る時は、注意深く足を運びました。ぎぼしにも、ほら、雪が。ぎぼしとは、橋の欄干についてある宝珠のことです。藤原為家の歌をしみじみと味わう日。長橋と呼ばれるだけあって、意外に道のりが遠いのです。唐橋の長さは大橋が163.8メートル、小橋が46.8メートルあるそうです。雨降りの今日の唐橋からの景色をご紹介します。
いにしへは現在地よりも南の位置、蛍谷と橋本の間に架けた橋だったようです。現在の位置には織田信長が移したそうです。大橋と小橋もこの時に出来ました。勢多橋、瀬田橋、世田橋、勢多長橋など、呼ばれました。古の歌に詠まれ、芭蕉の俳句と、文学にも多く関わりを持ちます。奈良時代に成立した日本の歴史書である日本書紀にも登場します。
晴れた日の景色とはかわり、雨の日は水墨風の景色が、ひろがります。水面に、景色が映ります。今では、ボートが瀬田川に浮かびます。昔の舟遊び。舟の上のすき焼の美味しかったこと。
引き渡す 瀬田の長橋 空晴れてくまなく見ゆる 望月の駒 藤原顕季昔の橋はたいへんと情緒があったと思います。交通量がどんどん増えて、現在のコンクリートで出来た唐橋は、歩道があり安全です。唐橋の東詰から山を眺めながら橋を渡ると、これからの桜の時期、新緑の季節とたいへん美しい風景があります。唐橋の西詰から水面を眺めながら橋を渡ると、四季それぞれの水の表情があります。
瀬田の唐橋東詰の石碑です。石碑の書。中国から渡った書。古い時代の文字は、亀の甲羅や石などの硬いものに彫られたようです。石に彫られる字は鋭いです。紙の発明と墨と筆。書家の方々は鋭い字も、やわらかな字も書かれます。数寄和の初夏の展覧会は、伝統文化から生まれ、育まれ、そして更なる飛躍の結晶を楽しんで頂けそうです。愉しみにしていてください。
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わたるも遠し せたの長橋
藤原為家